2015年03月27日
子供の頃、好きな教科は何かと問われれば、私は寸分の迷いもなく国語だと答えるような生徒だった。
小学生の時に習った「スイミー」や「くじらぐも」は今でもよく覚えているし、新学期に新しい教科書を受け取ると、真っ先に内容を確認するのは国語の教科書だった。
だからこそ、この作品を手に取ることは至極当然の流れだったように思う。
雁須磨子氏作、『こくごの時間』(A.L.C.D motto! )。
本作はそのタイトル通り、国語の教科書に載っていた作品をベースに描く8編のオムニバス作品集だ。
「走れメロス」、「少年の日の思い出」、「十五の心」、「言葉の力」、「夕焼け」、「小僧の神様」、「山月記」「くまの子ウーフ」……。
本作は、これら教科書に載っていた作品をベースに、学生時代の“あの頃”と“今”の自分を映し出すオムニバスストーリーである。
【 1時間め : 十五の心 】
“不来方の お城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心”
あのころ 何がそんなに恥ずかしかったのかな
【 2時間め : くまの子ウーフ 】
“ ぼくはぼくでできてるの ”
“ ウーフはウーフでできてるんだよ ”
声はうわずり 顔はゆで 唇はふるえ 汗みずく
はっきり言ってトラウマです
【 7時間め : 山月記 】
私は昔っから見栄っぱりでプライドばかり高く
周りの人間をことごとくバカだと思って生きてきたから
わかるわかると強く思った
国語の教科書に掲載される数々の作品が、全く異なる世界観を持つように、それらにまつわる人々のエピソードも様々だ。
残念ながら、使用していた教科書の違いからか本作で紹介された作品で実際に自分が授業で触れたことのあるものは数点ではあったが、作中の会話の中で懐かしい作品が数多く登場しており、本作を片手に、旧友と昔話に花を咲かせるのも悪くないと素直にそう思った。
学生時代、今の自分よりずっと幼かった自分が読み、感じていた物語の世界。
忘れていた、あの時間、あの文学、あの気持ち。
その当時の自分を思い出しながら胸の中に去来する物は懐かしさだけではない。
かつて国語を学んだ全ての人たちに。
本作を手にしてもらいたい。
(評:ラノコミどっとこむ編集部/やまだ)