2013年08月02日
まず初めに、この記事を読んでくださっている貴方に、きちんとお伝えしなければならないことがある。
今からご紹介する『神様のバレー』という作品を普通のバレーボール漫画だと思ってはいけない。
勿論、最高に面白い作品である。
だが、バレーに打ち込む学生たちの、微笑ましくどこかちょっとほろ苦い、そんな輝きに満ちた青春ストーリーを期待してはいけない。
なんだったら今まで貴方が読んできたであろう、全てのバレー漫画、及び青春スポーツ漫画の存在を、一旦、どこか安全な場所に仕舞っておいてほしい。
この物語の主人公・阿月 総一(あづき そういち)は、恐らく、貴方の中に今まで存在していたであろう、バレー漫画の概念をぶっ壊してくれる、大変魅力的で素敵な主人公である。
何故なら、彼が持ち合わせているものは、友情・努力・勝利という眩いまでの清廉オーラではなく、野望・戦術・利用といった、ゲスの極みオーラだからだ。
主人公・阿月 総一は、実業団バレーボールチーム<日村化成ガンマンズ>のアナリスト。アナリストとは、対戦チームを分析し、ベンチ外から監督に作戦を指示するいわば“チームの黒幕”であり、今や感情を排除したIDバレーが主軸になっているバレーの世界において、欠かすことの出来ない存在だ。
試合中、座席に寝そべり、PSP片手にゲームの攻略法を聞きながらチームに指示を出すという、お世辞にも真面目とは言えない態度でありながらも、その指示内容は的確である型破りなアナリストである阿月。
そんな彼の野望は、いつか全日本を引き連れて世界を制すること。
阿月の野心に興味を持った日村化成の会長は、彼に、ある条件をクリアしたら全日本男子バレーボール監督の座を用意すると約束する。
その条件とは、万年地区予選1回戦敗退の私立幸大学園中学校男子バレー部のコーチとなり、全国制覇させることであった。
阿月総一だ
神であるこの俺様が テメェらミジンコ共に全国制覇させてやる
感謝するがいい そして崇めやがれ
気合と根性が一番大切だと考える、元全日本女子候補のメルヘン脳なスポコン監督・鷲野 孝子(わしの たかこ)を尻目に、負け犬方程式が当てはまる補欠部員たちを言葉巧みに誘導し、チーム改革を進める阿月。
そして迎えた大会本番、阿月はチームにテロを起こす。
それにより、試合は鷲野の思いもよらない展開を迎えることとなる。
応援が味方を元気づける? そんなモン熱血バカの迷信だ
本当の応援ってのは 相手にプレッシャーをかけて精神崩壊させるためにやるもんなんだよ
そう、ここまでの阿月を見れば察して頂けると思うが、
彼の意味するIDバレーとは嫌がらせ(I)と騙し(D)に満ちたバレーのことである。
一見なんだこいつは?と思ってしまうような発言の多い阿月ではあるが、
しかし、彼の言うことは、常に理に適っており、生徒ひとりひとりをきちんと観察し、やる気を引き出すことで適材適所の活躍を導き出すなど、さすが天才アナリストといった一面を見せる。
気合と根性論だけでどうにかなると考えている無能のハゲワシ、鷲野とは比べ物にならないくらい優秀だ。
口も態度も悪い阿月だが、言うだけの仕事はこなす。
いや、それ以上の成果をあげていることは、阿月によって目標を与えられた補欠部員たちの生き生きとした表情を見れば明らかだろう。
ゆえに、ページを読み進めるたびに、この男の「ぶゎーーーか!」といった、人の感情を最大限にまで逆なでする罵倒と表情にも、どこかニヤリとしてしまう。これは、阿月の言葉に説得力があるからこそである。
これから先、阿月はどんな戦術を見せ、どんな罵倒をしてくれるのか。
果たして全国制覇の野望は叶うのだろうか。
神様のバレー、早くも2巻が待ち遠しい!
(評:ラノコミどっとこむ編集部/やまだ)
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