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2013年05月27日

コミック
インタビュー
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40代でオタクの日本人男性・井上(ジンサン)と、20代の中国人女性・月(ユエ)がお見合いを経て結婚! そんな夫婦の生活の4コママンガが掲載されている大人気ブログ『中国嫁日記』は書籍化され、シリーズ50万部を突破している。
そして、このほど15万部を突破した『月とにほんご 中国嫁日本語学校日記』(アスキー・メディアワークス刊)は、ジンサンと月、そして月の日本語学校の仲間たちの日常を中心に描きながら、“日本語の不思議”を解き明かすコミック。中国人から見た日本語や、日本語学校の様子が描かれており、とても興味深い一冊だ。


今回は著者の井上純一さんをお招きし、『中国嫁日記』の大ファンでもある新刊ラジオ・ブックナビゲーターの矢島雅弘がインタビュアーとなって、お話をうかがった。今回はその後編をお届けする。

■「(自分は)中国語は全然話せません(笑)」

矢島「では、インタビュー後半、宜しくお願い致します!
実はこのインタビューにのぞむ前に、井上さんのお名前の『一』の字が難しいとき(井上純弌名義)のTRPGなどの活動を調べさせていただきまして、やはりこだわりが深い方だなと思いました。最近は希有馬という名前で同人活動を行っているほか、フィギュアの作り込みもすごい。奥さまとそのこだわりの深さが起因して喧嘩することはないんですか?」

井上「夫婦生活でそれはやってはいけないんです。作品であればこうしようとコントロールできますけど、夫婦生活をコントロールしようと破たんするでしょう。多かれ少なかれ受け身じゃないと長続きしないと思います。基本的には相手が何をしたいか聞き出すのが大切です。
そういう意味では国際結婚って良くて、相手のことを理解しないと先に進めないので、基本的に相手の話を聞く姿勢ができるんですよ。言葉の面も含めて、ちゃんと考えて話すので、冷静になれますよね」

矢島「違う環境で育ってきましたし、そもそも常識としているものも違うということが頭に入っていますからね」

井上「そうですね。この人は日本人じゃないんだ、と。差別じゃなくて、そう認識しないといけないんです。だから僕の結婚生活の中で、中国嫁日記はすごく役に立っていますよ。マンガを描くために、相手の話をよく聞かなければいけませんから」

矢島「なるほど。井上さんはどういう風に聞く力を身に付けたのですか?」

井上「上手くいく経験を重ねることですね。僕はマンガやTRPGのほかに模型をつくっていますが、こうすると上手くいくんだという発見の連続で、それで上達していくんです。ただ、問題は、どうにもならないものですね。コントロールできないもの。それがインタビューを前半でお話させていただいたのですが(笑)」

矢島「お聞きしたいことがありまして、井上さんはクリエーターとして様々なトライ・アンド・エラーをしてきたと思います。僕はTRPGをプレイすることがあるのですが、このルールをつくるのにどれだけ試行錯誤したんだろう、と」

井上「TRPGはサイコロや台紙、鉛筆を使い、人間の会話によって進めるゲームなので、コミュニケーションによって物語を創るという遊びなんですね。すると、このゲームの創り手はコミュニケーションとは何かということを考えるんです。
例えば、この遊びには『マスター』という、人の話を聞いて物語をまとめてくれる役目の人がいます。そのマスターという立場の人が、例えば見知った仲間である場合と、はじめてその卓についた知らない人だと、物語をつくる上で状況は全く異なりますよね。後者の場合、そこにいる人に物語をつくる仲間だと認識させないといけないんですが、そうさせるためのテクニックが実はゲームのシステムそのものに落とし込まれているんですよ。『アルシャード』と検索をかけてその本を買って欲しいのですが(笑)コミュニケーションのやり方が分かるはずですよ。
TPRGのプレーヤーって、人当たりがすごく良くて、話をよく聴くんです。それは、人とコミュニケーションをしないと楽しめない趣味だから。具体的にどんなゲームか知りたい人は『リプレイ』というジャンルがあって、TRPGの様子を文章で表したライトノベルがあるので、それを読んで欲しいです」

矢島「『中国嫁日記』シリーズについてお話をうかがいたいのですが、世の中に自分たちの結婚生活を公開して、普段の生活は変わりましたか?」

井上「知名度はかなり上がりましたね。50万部を越えるとこれほど違うのか、と実感しています。出版社さんの待遇も違いますし(笑)ファンの目も違います。ただ、自分がやっていることはあまり変わっていないですね。毎日の生活もそんなに変わっていないです」

矢島「普段はどんな生活を送っていらっしゃるんですか?」

井上「マンガを描いたり、模型を造ったりしています。最近は中国に住むようになったのですが、あちらは家が広いので作業がしやすくなりましたね。TRPGだけは友だちがいないので残念ながらできないんですが、それ以外は何でもできるんですよ。あとは不満を言えば、インターネットの回線速度が鈍いですね」

矢島「今は中国と日本を行き来していらっしゃるとのことで、すごく気になることがありまして、月さんは学んだ日本語をどこまで覚えているのかな、と。中国にいると日本語を使わなくなってしまうじゃないですか」

井上「これはですね、人間が話をするというのは2つの側面があって、一つは条件反射的に出てくる言葉と、もう一つが本当に伝えたいことがあって理路整然と考えて話す言葉です。
それで、月の日本語は、普段話しているときはまったく気にならないんですよ。日本にいたときのままのように思うのですが、マンガを描くためにネタを聴くと、日本語でのコミュニケーション能力が落ちていることが分かるんです。単語が出てこないし、伝えたいことを伝えられる語彙が並べられなくなっているんです」

矢島「それって、読者の目線からするとすごく面白い状況だと思います」

井上「よく、月のことを考えていないんじゃないかとか、もっと正確な日本語を教えるべきだと言われるのですが、僕は違っていれば違っているほど面白いと思うんです。
でも、実は言語って女性の方が覚えるのが速いそうで、月もあっという間に日本語を覚えました。ものすごい勢いで日本人レベルの言葉を身につけましたね」

矢島「井上さんは中国語をしゃべられるのですか?」

井上「全然駄目です(笑)中国語で「これ一つ」というのと、「いくら?」くらいは覚えていますが、それくらいですね。もっとほかの言葉もすんなり出てこないとやばいな、と」

矢島「井上さんがある程度コミュニケーションができるようになると、『日本夫日記』とか出せそうですね」

井上「それはあると思いますよ。おそらく中国人が知りたいのは、日本人が中国人をどう見ているかだと思いますからね」

矢島「また、この『月とにほんご』の執筆に関してエピソードがあれば教えてください」

井上「この『月とにほんご』を担当した編集者が、本当に真摯になって編集をしてくれました。一回、ネームが1年ほど止まってしまった時期があったのですが、その間にもこういう内容はどうでうすか?とアドバイスしていただいて。相当厄介な本だったと思いますよ。
さらに、ですよ! 僕が尊敬しているデザイナーのよつばスタジオの里見英樹さんと、ブックデザイナーの祖父江慎さんに本のデザインや装丁をお願いしていただいたんです。日本で最高峰の2人に本を作ってもらったということが嬉しくて、もうマンガ家じゃなくなってもいいかなと思っているくらい(笑)本当に尊敬するお二人なので、人生においてここまで嬉しいことは…そうそうないですね」

矢島「では、最後にインタビューを読んで『月とにほんご』に興味を持たれた皆さまに、メッセージをお願いします」

井上「読んでいただきありがとうございます。『月とにほんご』や『中国嫁日記』は、いろいろ考えて詰め込んでいるので、読んでいただくと嬉しいです。きっと、人生に損はないと思います(笑)。また、『中国嫁日記』はウェブでもタダで読めるので、是非読んでみてください」

矢島「ありがとうございました!」

(了)

■井上純一(井上純弌)さんプロフィール

1970年生まれのTRPGゲームデザイナー、イラストレーター、漫画家、玩具会社 銀十字社代表、同人サークル希有馬屋(けうまや)代表。代表作:コミックエッセイ『中国嫁日記』シリーズ(エンターブレイン刊)、同『月(ゆえ)とにほんご』(アスキー・メディアワークス刊)、スタンダードTRPGシリーズ(SRS)『アルシャードセイヴァー』『エンゼルギア』『天羅万象』他。40歳の時に、20代の中国人女性、月(ゆえ)と結婚。その月が通った日本語学校で巻き起こる、日本語にまつわる、笑えて、ためになるトピックの数々をコミック化したのが『月とにほんご』(現在、15万部)である。

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